パテントマップ3.0-特許情報の高度な活用に向けて- [知財]
パテントマップが急速に普及したのは21世紀になってからだと思われる。IT技術の革新によるデータストレージの大規模化やコモディティ化、更には機械学習技術の普及が要因として挙げられる。NRIやCAS(STN)がテキストマイニングツールを矢継ぎ早にリリースして、パテントマップは流行した。
このような工学的な技術だけでなくMBA的な経営技術の一般企業への浸透もこれを後押しした。戦略コンサルティング会社で使われているようなフレームワークを解説する本が書店に所狭しと並ぶようになり、別に海外のMBAコースに行かなくても経営学の枠組みを学べるようになった。パテントマップを知財戦略のみならず事業・全社戦略にも生かそうという機運が盛り上がったわけである。
さて、このような状況の中で立て続けにパテントマップがらみの本が出版されたので、工学・経営学的な視点から主要な本をレビューしてみたい。ちょっと前にWeb2.0というバズワードがあったが、それをまねてパテントマップx.0として、各々の世代的な特徴を整理する。
◆パテントマップ1.0
【特許調査とパテントマップ作成の実務】
パテントマップ1.0では、工学的には単純集計の可視化レベル。経営学的にはフレームワーク等の解釈系の技術が存在しない状態と定義する。ただし、この段階でも目的がはっきりしていれば十分に役に立つ。これから進出しようとしている分野の競合や技術の動向を俯瞰するのに有効である。上記の本は2011年に出版された比較的新しい本だ。バブルチャートなどのパテントマップの代表選手のつくり方がとても分かりやすくまとまっている。
ただ、この著者はExcel VBAを使ってマップ作成を自動化すると便利と書いているが、VBAのコード例までは書いていない。むしろ、サーチャーやインフォプロは少しでもプログラミング技術を習得すべきと私は思っているので、そのあたりについて書いた続編に期待したいところである。
◆パテントマップ2.0
【特許情報分析とパテントマップ作成入門】
この段階では、工学的には上記と同じ単純集計レベル。経営学的にはフレームワークを積極的に活用してパテントマップから施策に結びつく知見を見出そうとするものである。上記の本については以前にレビューしたので詳細はそちらに譲るが、この本ではマイケル・ポーター流のフレームワークを知財担当者に紹介するというユニークな試みがあるのに、それを用いたケーススタディが不十分なところが残念。続編(ケーススタディ集)に期待したい。
◆パテントマップ3.0
【特許情報のテキストマイニング―技術経営のパラダイム転換】
最終形態。工学的には高度な数理テクニックを駆使、その結果を経営学の枠組みを用いて解釈することで戦略立案に生かすというのがパテントマップ3.0。ここまでくると定性的にも定量的にも高度な分析が行われることになる。ビッグデータを扱う(コンサル型の)データサイエンティストの仕事に近くなる。
上記の本では数理システム社のTextMiningStudioやオープンソースのRという分析ツールを使って特許文書を技術経営の視点で分析しようという意欲作。単にツールに突っ込んでみるようなやっつけではなく、数式も書かれており非負値行列因子分解(NMF)といった比較的新しいメソッドを用いて分析しているところが面白い。
しかし、本書はケーススタディとしては役に立つと思うが、分析ツールのチュートリアルが十分ではないのでこれらの知識は他で補う必要があるだろう。テキストマイニングの入門については以前の記事を参考までに挙げておく。
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パテントマップから有効な知識を獲得するためには、経営・数理・ITの技術をバランスよく活用することが重要だと思う。もちろん、一人でやることが難しいなら、異なる得意分野をもった人材のチームで問題解決にあたるとよいだろう。
(まぁ、しかし、単純集計でも解釈系がしっかりしていれば十分強力な分析ができるので、どんな分析をやるにせよ目的意識をしっかりもって多面的に分析するのが一番大事だと思う。数理技術が高度でも施策に結びつかなければ何の意味もない。)
このような工学的な技術だけでなくMBA的な経営技術の一般企業への浸透もこれを後押しした。戦略コンサルティング会社で使われているようなフレームワークを解説する本が書店に所狭しと並ぶようになり、別に海外のMBAコースに行かなくても経営学の枠組みを学べるようになった。パテントマップを知財戦略のみならず事業・全社戦略にも生かそうという機運が盛り上がったわけである。
さて、このような状況の中で立て続けにパテントマップがらみの本が出版されたので、工学・経営学的な視点から主要な本をレビューしてみたい。ちょっと前にWeb2.0というバズワードがあったが、それをまねてパテントマップx.0として、各々の世代的な特徴を整理する。
◆パテントマップ1.0
【特許調査とパテントマップ作成の実務】
パテントマップ1.0では、工学的には単純集計の可視化レベル。経営学的にはフレームワーク等の解釈系の技術が存在しない状態と定義する。ただし、この段階でも目的がはっきりしていれば十分に役に立つ。これから進出しようとしている分野の競合や技術の動向を俯瞰するのに有効である。上記の本は2011年に出版された比較的新しい本だ。バブルチャートなどのパテントマップの代表選手のつくり方がとても分かりやすくまとまっている。
ただ、この著者はExcel VBAを使ってマップ作成を自動化すると便利と書いているが、VBAのコード例までは書いていない。むしろ、サーチャーやインフォプロは少しでもプログラミング技術を習得すべきと私は思っているので、そのあたりについて書いた続編に期待したいところである。
◆パテントマップ2.0
【特許情報分析とパテントマップ作成入門】
この段階では、工学的には上記と同じ単純集計レベル。経営学的にはフレームワークを積極的に活用してパテントマップから施策に結びつく知見を見出そうとするものである。上記の本については以前にレビューしたので詳細はそちらに譲るが、この本ではマイケル・ポーター流のフレームワークを知財担当者に紹介するというユニークな試みがあるのに、それを用いたケーススタディが不十分なところが残念。続編(ケーススタディ集)に期待したい。
◆パテントマップ3.0
【特許情報のテキストマイニング―技術経営のパラダイム転換】
最終形態。工学的には高度な数理テクニックを駆使、その結果を経営学の枠組みを用いて解釈することで戦略立案に生かすというのがパテントマップ3.0。ここまでくると定性的にも定量的にも高度な分析が行われることになる。ビッグデータを扱う(コンサル型の)データサイエンティストの仕事に近くなる。
上記の本では数理システム社のTextMiningStudioやオープンソースのRという分析ツールを使って特許文書を技術経営の視点で分析しようという意欲作。単にツールに突っ込んでみるようなやっつけではなく、数式も書かれており非負値行列因子分解(NMF)といった比較的新しいメソッドを用いて分析しているところが面白い。
しかし、本書はケーススタディとしては役に立つと思うが、分析ツールのチュートリアルが十分ではないのでこれらの知識は他で補う必要があるだろう。テキストマイニングの入門については以前の記事を参考までに挙げておく。
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パテントマップから有効な知識を獲得するためには、経営・数理・ITの技術をバランスよく活用することが重要だと思う。もちろん、一人でやることが難しいなら、異なる得意分野をもった人材のチームで問題解決にあたるとよいだろう。
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2013-02-02 02:11
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