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データ分析上達法②「データ分析と社会人大学院」-データサイエンティストを目指して(4) [データサイエンティスト]

前回の記事でデータ分析を身に着けるための手段として、①Rを独学で身に着ける、②社会人大学院に入学する、③データ分析専門企業に転職する。という3つを提案しました。今回は「②社会人大学院に入学する」について書いてみようと思います。

Rなどのフリーで高度なツールがある今では頑張れば独学でデータ分析技術を習得することができると思います。ただ、忙しい社会人がゼロから独学で勉強して身に着けるというは大変なことではあります。どうせ頑張らないといけないならもっと手っ取り早くかつ本格的に学べる方法はないかというと、その一つが大学院に通うという方法になります。大学院以外にもEMCが開催しているデータサイエンティスト育成トレーニングコースというものがあるらしいですが、今回の主題はあくまでも「社会人大学院」です。

私は社会人大学院の出身です。数年前に「筑波大学ビジネス科学研究科経営システム科学専攻」(通称:GSSM)というところを修了しました。なので、この大学院については詳しく紹介することができます。この大学院は茨城県つくば市にあるわけではなく、東京の茗荷谷にあります。また、平日夜間と土曜日に講義やゼミが開催されるので都心に勤務しているビジネスマンが会社勤務を続けながら専門的な学識を深めることができ、修士号(MBA)や博士号まで取得することができます。おまけに国立なので授業料も私立に比べれば格段に安価です(2年間で130万円程度)。

この大学院のコンセプトは「経営・数理・ITの融合教育」です。戦略論やマーケティングなどの経営学、統計学や最適化などの数理的な手法、そしてプログラミングやデータベースなどのIT技術をバランスよく学ぶことができます。修士課程では修士論文が修了条件に課せられており、アカデミックな色彩が強い大学院です。MBAを標榜していますが、ケースの読み込みとディスカッション中心の一般的なMBAとは異なり、アカデミックにきちんとした論文を作成しないと修了できません。論文指導は3人の指導教官により行われます。通常、この3人は別々の分野の教官となりますから、学際的な色彩の強い社会人の研究に対応した指導体制と言うことができます。

この修士論文の作成には非常に苦労するわけですが、これが何とも他では得られない学びの場になります。自前のデータを持ち込み、又は自分でデータを収集した上で、RやSPSSの分析ツールをバリバリ使って研究を行うことになります。また、スパルタな先生もおり、生半可な分析では修了させてももらえません。分析しながら深く思考してそれを論文として表現する訓練を積むことになります。このような環境ですから、分析ツールなどに触ったことがなかった人でも2年間で分析を使いこなし知識を獲得し表現する手段を嫌というほど頭と体に刷り込むことができます。

30人の少人数教育なので学生間のコミュニケーションも非常に濃密です。多様なジャンルの職場で働いている人たちなので自分の専門外のことを同級生から学ぶことができます。統計学のスペシャリストが経営を学ぶために来ていたりするので、RやSPSSについては既にプロレベルという人も少なくありません。分析手法で分からないことがあれば、プロの同級生に相談することが容易にできます。統計学やプログラミングなどの実務知識の学習は詳しい人が近くにいると非常に捗るので、これはとても恵まれた学習環境です。

また、この大学院の本質は分析ツールの小手先のテクニックを学べることにあるわけではなく、「本当の問題とは何か?」ということを深く考えて、これを解決するための手段を自分と教官の共同作業で追及していくことにあります。データサイエンティストの文脈ではRやHadoopなどのキーワードに踊らされている感がありますが、このようなツールは時代とともに変遷していきます。本当に身に着けるべきことは問題発見能力と問題解決能力です。たとえRやSPSSが上手いデータサイエンティストでもこれらの能力が備わっていなければ、現在の流行が去るのと同時に役に立たない人材になってしまうと思います。

欧米では社会人教育が充実しているのでビジネスで必要なことを在職しながら大学で学ぶことができます。しかし、日本ではまだ大学での社会人教育が浸透しているわけではありません。データサイエンスを身に着けて活躍したい人が社会人大学院で学ぼうとすると適した大学が非常に少ないのが現状です。GSSMは本格的なデータサイエンティストの育成に適した現行では日本唯一の社会人大学院と言えるでしょう。

GSSMは入試倍率が比較的高いのでそれなりに準備が必要です。とはいうものの、昔みたいに倍率10倍ということはなく3~4倍といったところなのできちんと対策を立てれば合格できます。入試では研究計画書が要になるので、アカデミックスタイルで書き上げる必要があります。入試対策についてはググればいろいろ出てきますのでここでは触れません。ちなみに、私は以下の本で勉強しました。

■参考文献

研究計画書の考え方―大学院を目指す人のために (DIAMOND EXECUTIVE DATA BOOK)

研究計画書の考え方―大学院を目指す人のために (DIAMOND EXECUTIVE DATA BOOK)

  • 作者: 妹尾 堅一郎
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本


・知財界隈でも有名な妹尾先生の本です。研究計画書の実例とそれに対する先生のコメントがとても参考になりました。社会人大学院に限定されていませんが、GSSMはアカデミックスタイルなのでこの本にあるような内容は踏襲しておく必要があるでしょう。



国内MBA研究計画書の書き方―大学院別対策と合格実例集

国内MBA研究計画書の書き方―大学院別対策と合格実例集

  • 作者: 飯野 一
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2003/07
  • メディア: 単行本


・こちらはMBA対策本です。GSSMの事例も掲載されているので参考になると思います。

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コメント 1

T.Suzuki

興味深く拝見させていただきました。
私も2年前に社会人大学院で勉強しました。一番勉強したかったデータ分析・マーケティングリサーチに時間を割けず、統計などの勉強はまだ続けています。市場調査会社で働いている身としては、データサイエンティストのように統計が注目されるのは嬉しいことです。
今後もブログの方、読ませて頂こうと思ってます。
by T.Suzuki (2013-07-24 09:26) 

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